新・義肢装具士業界構想
改革その2
病院は義肢装具士を雇用せよ
病院が義肢装具士を雇用することは、病院・義肢装具士双方にメリットがあることだと私は考えています。今まで病院が義肢装具士を雇用することには、大きなハードルがありました。
1つ目は設備投資です。「義肢」や「装具」を製作するには、大型の製作機械とそれらを設置するスペース(専用の製作室)が必要です。プラスチックを成型するための真空成型機や工業用オーブン。切削機や集塵機など大型機械がいくつも必要となります。
2つ目に運用コストです。上記大型機械を動かすための電気代、石膏を使用するために大量に水を必要とするため水道代も高くなりやすいです。
3つ目はスペースです。専用の製作室が必要ですが1部屋だけでは足りないでしょう。石膏を扱う部屋。プラスチック成型を行う部屋。切削加工の部屋。金属加工の部屋。といったスペース(部屋)が必要です。
これらの問題により病院が義肢装具士を雇用して「義肢」や「装具」を提供することは、とても高いハードルでした。
私の提案する義肢装具士の雇用は、これら設備投資を必要としません。
前回の記事で書いた既製品装具とセントラルファブリケーションを使用した義肢装具士の雇用です。
病院は義肢装具士を雇用することで義肢装具士の人件費、既製品装具を保管するスペース(部屋、倉庫)は必要となりますが、患者さんい対し装具を直接販売することで新たな収益源となるでしょう。
義肢装具士は病院に雇用してもらうことで、義肢装具製作事業所での勤務より適正な労働時間で勤務できるようになるでしょう。病院に勤務しているため、事業所の営業時間以外の要因で労働時間が長くなるといったことは無くなり、当然ですが勤務先の病院の勤務時間合わせた労働時間となります。
既製品、セントラルファブリケーションで対応できない疾患や怪我などは、オーダーメイドの「義肢」「装具」を作製可能な高い技術を持つ義肢装具製作事業所に任せて対応してもらえれば良いので、病院内でオーダーメイドの製作はする必要がありません。
さらに装具を病院が販売することで装具に関する情報を直接カルテと紐付けすることができます。これまでは義肢装具製作事業所に、確認を取らなければ、どんな装具を装着したのかわからない、下手をするとどの事業所に処方したのかわからず、過去に処方した装具がわからないという事態もありました。
もし病院が義肢装具士を雇用し、既製品装具やセントラルファブリケーションを利用し始めたら、一部の義肢装具製作事業所は廃業することになると思います。
しかし義肢装具士がQOLの高い生活をするためには、現状の働き方では困難です。
病院が義肢装具士を雇用することで、病院、義肢装具士、患者さんそれぞれ得られるメリットが大きくなると私は考えております。